現物出資とは、金銭以外の財産で出資することで、会社の設立に際しては、株式会社の場合は発起人に限ってすることができます。
現物出資の目的は、株式会社の資本を充実させることです。
よって、貸借対照表の資産の部に計上することができる財産であれば、何でもよいことになっています。
主な具体例としては次のものが挙げられます。
①動産
②不動産
③有価証券(国債・社債・株券など)
④鉱業権
⑤漁業権
⑥工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)
⑦債権(貸付金など)
⑧営業の全部又は一部
⑨得意先
⑩営業上の秘訣
※ただし、労務や信用は含まれません。
目的たる財産の価格の評価方法は、特に規定はありませんので、適正な時価を基準にして、各発起人の意思で決めることができます。
現物出資がある場合は、原則として、本店所在地の地方裁判所に検査役を選任してもらいます。
そして、出資する財産についての調査を受ける必要があります。
この場合、取締役は地方裁判所に行って検査役の選任を請求します。
しかし、検査役の調査はある一定の条件を満たすことにより省略することができます。
【検査役の調査が不要となるケース】
① 現物出資の対象となる財産の定款に定めた価格の総額が、500万円を超えない場合
★新会社法では、資本金の額に対する割合に関係なく500万円まで、検査役の調査が不要です。
② 現物出資の対象となる財産が市場価格のある有価証券で、定款に記載された価額が当該有価証券の市場価格を超えない場合
③ 現物出資する財産の定款に定めた事項が相当であると弁護士又は弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む)、監査法人、税理士又は税理士法人が証明した場合(財産がが不動産の場合は、不動産鑑定士の鑑定評価が必要)
上記の①、②、③のいずれかに該当する場合は、検査役の調査を受ける必要はありませんが、上記の①、②、③のいずれかに該当しない場合は、検査役の調査を受けなければなりません。
【ポイント】
現物出資は現金のみの出資に比べて、手続きが複雑になりますので、検査役の調査を省略できるようにすること(現物出資を500万円までに抑える)がポイントです。
現物出資は税法上では出資者個人から会社への譲渡として扱われますので、財産が不動産の場合は不動産取得税や不動産登録免許税が課せられたり、出資者個人には譲渡所得に対して課税されることがあるのでご注意下さい。
変態設立事項である「会社の負担に帰すべき設立費用」は、原始定款(会社設立の際に作成する定款)に記載しておかなければ効力がありません。
「会社の負担に帰すべき設立費用」には、定款の認証手数料と出資金の払込みの保管手数料は含まれません。
「会社の負担に帰すべき設立費用」を定款で定めた場合は、例外なく検査役の調査を受けることになります。
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